「戰後の貿易」
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時事新報に掲載された「戰後の貿易」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
我邦の外國貿易は去る明治二十三年を除けば十五年以來輸出超過の一方なりしに一昨二十七年即ち日清戰爭以來輸入俄に増加して却て輸出に超過せり此勢は昨年より本年に及びてますます大なるより或は■(きへん+「巳」)憂を懷いて普佛戰爭後獨逸は俄に奢侈の風を催ほして贅澤品の輸入を増し輸出入の關係一變して經濟上に非常の損失を招きたることあり我國に於ても戰後輸入額の俄に増加したるは獨逸と同樣の傾向を現はしたるにあらずやなど心配するものもあらんかなれども今貿易の實際に就き輸入の増加したるは如何なる種類の物品なるかを調査するときは一昨年來の増加
は决して掛念に足らざるの事實を發見す可し二十三年より二十七年に至る五箇年間に輸入額の増加したるは四割三分にして此内砂糖、煙草、肉乳及び食品酒類其他飮料等消費物の増加は五割七分なり然るに一昨年以來を見るに昨年の輸入總高は一昨年に比し六分の増加なれども前記の消費物は却て四分の■(にすい+「咸」)少を示し又本年四月までの輸入總額を昨年の同期間に比すれば三割六分を増しながら消費物は五分の増加に過ぎず一目の下に明瞭ならしめん爲め左に表記す可し
輸入總額増加の割合と消費物増加の割合
年 月 輸入總額 砂糖類煙草類肉乳及
食物類酒類其他飮料
自廿三年
至廿七年五箇年間 四割三分増 五割七分増
自廿七年
至廿八年一箇年間 六分増 四分■(にすい+「咸」)
自廿八年一月至四月
自廿九年一月至四月四箇月間 三割六分増 五分増
然らば二十七年以來輸入額の著るしく増加したるは如何なる種類の物品なるかと云ふに我輩の調査に依れば繰綿、麻、織糸、條鐵及び竿鐵、熟皮類、羊毛、羅紗等にして是等の物品が増加の割合は二十八年は二十七年に比して總額の増加六分の内に於て四割四分を増し又二十九年一月より四月までを前年の同期間に比すれば同じく三割六分の内に於て六割七分の増加を見る即ち左表の如し
輸入總額増加の割合と繰綿外五種増加の割合
年 月 輸入總額 繰綿麻織絲條鐵及竿
鐵熟皮類羊毛羅紗
自廿七年
至廿八年一箇年間 六分増 四割四分増
自廿八年一月至四月
自廿九年一月至四月四箇月間 三割六分増 六割七分増
左れば一昨年來輸入額の著るしく増加したるは繰綿、麻、織絲、條〓及び竿〓、熟皮類羊毛羅紗等の如き原料品もしくは必用品に多くして酒、煙草其他の消費物は寧ろ割合に■(にすい+「咸」)少を見る可し獨逸の如きは戰勝後奢侈の風を催ほして俄に贅澤品の需用を告げたる結果として輸入超過を致したる其反對に我國の増加輸入品は右の如く孰れも工業製造の用に供して國内一般の需用に應ずるのみか更に外に輸出して貿易の發達を助くるもの〓〓〓〓ず此事實は取りも直さず戰後日本經濟界の〓〓〓〓を〓白したるものなれば我國人たるもの〓〓に〓〓〓〓の〓に〓〓〓〓〓〓〓〓じますます〓〓〓〓して日本をして世界の〓〓〓國たらしめんことを期す可き〓〓なり