「臺灣の經營果して如何」
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時事新報に掲載された「臺灣の經營果して如何」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
臺灣の經營は目下の急にして一日も等閑に付す可らず新領地の新施設素より容易ならずと
雖も割讓以來最早や一年餘を經過して諸般の事も大凡そ目鼻の付く可き頃なり政府は既に
前期の議會に同嶋の施設に關する經費の支出を求めたることなれば豫定の計畫を實にして
着々歩を進む可き筈なるに我輩の聞く所に據れば實際甚だ緩慢にして目下緊急の施設にし
て未だ着手せざるもの多しと云ふ解す可らざる處なり豫算に據れば營繕土木費は四百五十
餘萬圓の額にして差當り道路橋梁の工事は最も急にせざる可らざるものなれども實際に其
工事は日にますます進歩しつゝあるや否や、衛生上の大計畫は姑く別として臺北その他の
都會に於ける市街の清潔法、下水の疏通等の如き目下の気候に一日も忽にす可らず何は扨
置き着手す可きものなれども其市街の有樣は舊に比して果して觀を改めたる所あるや否や、
阿片の處分に付ては政府自から藥品を製造して既に惡習に染みたるものには之を賣渡して
以て密輸入を防ぎ其他の者には一切嚴禁する趣向の由なれども實際に其手順に運びて多少
は目的を達するの見込あるや否や、又租税の徴収は嶋治上に第一の必要なれども果して豫
算通りに収入の目算立ちたるや否や凡そ是等の施設は事の最も急なるものにして然かも豫
算調整の當時に於て大抵の計畫は既に定まりたることならん又當局者は孜々鞅掌中ならん
なれども我輩は今日に至るまで事實の實際に就て未だ確なる報告に接せず甚だ遺憾に思ふ
所なり或は嶋地の有樣は人心今日恟々歸着する所なく動もすれば土匪蜂起の騒動さへある
程の始末にして事の着手容易ならずなど云はんかなれども人心の歸着せざるは新領地の常
とは云ひながら自から原因なきに非ざれども其次第は兎も角も苟も不穩の擧動を企つるも
のあるときは自から守備隊の在るあり騒亂の鎭定は軍隊の任ずる所なれば施政の局に當る
ものは之を他に一任し專ら嶋治の施設に從事して可なり嶋地の事は總て内地と異にして執
務の實際も同樣に見る可らず自から種々困難の事情もあることならん強ひて責むるは氣の
毒の情なきに非ざれども既に官制も定まり大小の吏員も夫れ夫れ任命を終りて只事の進歩
を急ぐのみなる目下の塲合に斯くまでに緩慢を免れずとあれば内地人の考にて彼等は俸給
を受け責任を負ひながら日々何事を爲しつゝあるやと疑ふものあるも聊か辯解に差支ふる
次第にして我輩の取らざる所なり聞く所に據れば彼の嶋民等は素より我に心服せざるのみ
か日本を小國と侮りて假令ひ一時は壓服せらるゝも遂には元の有樣に復す可しとて竊に妄
想を懷きつゝある其上に在留外國人の中などにも自家の利害上より我〓〓の下に在るを快
しとせず日本は永久臺灣を領するの力〓し早晩他の強國の有に歸す可しなど竊に流言を放
つものなきに〓〓〓〓ふ彼の人〓恟々など云ふは此邊の事情より來るも〓〓〓ども抑も彼
等にして斯る危〓〓〓〓〓き外人の〓〓などに迷〓〓〓〓〓〓しむるは〓〓〓〓の〓〓〓
〓〓可きもの少なく〓〓〓治の大〓〓〓らざる〓〓〓〓〓〓らず〓〓者の〓を全ふしたる
ものとは云ふ可らず一昨年來の戰爭中に我軍が彼の大陸の地を占領して民政を布きたるが
如き全く一時の處置に外ならざれども急遽の間に尚ほ能く民心を収攬して治績の見る可き
もの少なからざりき然るに臺灣の施設に至りては割釀後一年餘の日月を假して人にも金に
も充分の餘裕ありながら斯る始末とは何ぞ相違の甚だしきや斯くては新版圖の實を擧るこ
とも容易ならず我輩の遺憾に堪へず敢て當局者の反省奮發を希望する所なり