「私設鐵道の監督」
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時事新報に掲載された「私設鐵道の監督」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
官設鐵道の實際を見れば十數年來殆んど改良進歩の跡なく聊かの出水にも一週間二週間の
不通を致しながら豫防の用意さへも行届かずして一般人民の迷惑少なからず斯る有樣にて
打棄て置くは國家の爲めに不利なれば〓然民間に〓〓す可しとは我輩が政府の當局者に勸
告したる所なるが偖いよいよ賣却を斷行して民有と爲す曉には固より之に對する相當の取
締法なかる可らず前日も論じたる如く民設鐵道は利uを專一として營業するが故に乘客は
勿論荷物の取扱に至るまでも熱心に種々の便法を工風する他の一方には亦自から種々の欠
點もありて會社の自由に一任し難きことも少なからざれば賣渡に巖重の條件を附する其上
に監督の權は堅く政府の手に握りて苛めにも放縱の擧動を許す可らず左れば一切の官設鐵
道は賣却するも鐵道局は今日のまゝに存し置くのみならず尚ほ一層權限を擴張して技師の
如きも其數を揩オ全國鐵道會社の敷設工事より營業事務に至るまで巖重なる檢査を施行し
若し聊かにても不都合あらば〓〓なく譴責して改正せしめ或は次第に由りては〓〓〓〓停
止を命ず可し其趣向は今の管船局にて船舶を檢査し苟も航行に危險の心配あるものは修復
を命じ又は出帆を差止むると同樣ならしむること肝要なり〓〓鐵道なるものは〓共の便利
に供する爲めの設置にして假令ひ一會社の所有に係るも其監督は國家の權利に屬するもの
なれば政府が其設計〓〓の事に干渉して巖重の監督を行ふは當然の處置なりと云ふ可し斯
くて今の官設鐵道を悉く賣却したる其代金の始末は如〓〓〓〓〓と云ふに我輩の所見にて
は之を〓〓〓の〓〓〓〓んとするもの〓〓〓〓〓〓〓り〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓の〓
〓〓〓〓〓〓〓との〓〓〓〓〓〓〓〓げ亞t〓〓〓〓め〓〓〓〓〓〓〓ゝ軍〓〓〓〓〓〓
〓〓〓〓〓〓〓容易ならざる〓に上る可きのみか〓〓進歩の激しき世界に在ては武器の如
きも日々改良を見ることなれば精鋭なる武器の發明に接して之を得んと望む其趣は婦人が
一の衣裳を製すれば更らに他の衣裳を望み流行の品を見て多々ますます之を得んと欲する
が如く到底償金にて足るべきに非ず海陸軍の擴張は目下の急務にして第一の必要は金にこ
そあれば鐵道賣渡の代金を擴張費に使用するは最も適當のことなる可し即ち官設鐵道の賣
却は一方には不完全の鐵道を改良し一方には軍備擴張の資金を得るものにして一擧兩得の
處置にこそあれば我輩は國家の爲めに其得策を認めて敢て斷行を勸告するものなり