「製艦の方針」

last updated: 2021-12-25

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時事新報に掲載された「製艦の方針」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

製艦の方針

我輩は前號に製艦の方針を論じて先づ主戰艦の事に及びたり尚ほ其方針に就て述ぶる所あらんに抑も艦隊の編成は主戰艦を本隊として之に巡洋艦、報知艦、水雷砲艦、航洋水雷艇を附屬せしむること一般の定則にして是等の補助艦は戰時に於ては常に本隊の前面もしくは左右兩翼に配置せられ戰情を視察して之を司令長官に報告し以て軍議の敏活を助け巡洋艦の如きは或は戰闘に備はりて大に用を爲すことある可し日清戰爭中に我艦隊の運動常に機先を制したるは主として八重山、吉野、秋津島の如き〓力輕快の軍艦に乏しからずして機敏の〓〓を〓げ得たるが爲めに外ならず而して爰に注意す可きは我國の如く四面環海、攻防共に〓〓區域の渺漠たる國柄に於ては殊に〓〓通信の任務を要すること大なる可きが故に割合に多數の補助艦を具ふるの必要を見る其中にも巡洋艦の如きは其用、殊に大なるものあるが如し巡洋艦は本來主戰艦もしくは海防艦の如く専ら戰闘を目的とするものに非ざれども實際には屡ば戰列に加はりて〓〓〓共に當り且つ艦隊の補助艦として〓〓〓〓〓〓〓〓〓戰を負擔し〓〓〓〓を〓〓する等は特殊の長所にして他に肩を比す可きものなし〓〓〓〓〓〓〓其種の軍艦を多く所有する所以なり(現〓〓〓〓〓〓大〓二等に分〓一〓は七八千噸以上一萬〓〓〓〓〓〓〓三千噸以上五六〓〓〓〓は三千〓以下〓して〓力は何れも十八〓〓〓り二十二三〓なり)〓に〓大なる者の〓〓〓〓〓〓の〓次第に進歩して航續性、速力の大なると共に攻防の勢力も亦強大を加へて劣等の主戰艦と相對しては殆んど相匹敵し得るの望あるに至りたれば艦數に豐ならざる目下の海軍に是種の軍艦を備ふるときは戰時に於ては艦隊の勢力を加ふること大なると同時に平時には固有の任務を盡さしむるを得て經濟の點に於て益すること一方ならざる可し而して更らに平時警備の點より見るも新領地の臺灣を始めとして朝鮮支那南洋諸嶋の巡邏は勿論、近來我航海業大に發達して歐洲濠州米國等の海外航路も既に開けたるに就ては此方面の利益を保護する爲めにも軍艦派遣の必要ある可し所謂海軍平時の任務は今後ますます繁多を告ぐるに至ること必然なれば装甲并に一等巡洋艦の種類と共に輕快迅速なる各種の多數を具ふるは目下の急務なりと云ふ可し之を要するに製艦の方針なるものは其國の海軍政略を離る可らざる關係を有する者にして英國の如き〓〓のノルスヴルーク卿が海軍大臣たりし時に確定實行したる方針は英國は聯合二強國に於て製造する一艦に對するに二艦を以てす可き割合にて新造し以て的を壓倒す可しとの主義にして又デーリーニユース(自由黨の機關新聞)の如きも聯合敵國の一に於て一隻の主戰艦を新造する時は我も亦同じく其一隻を造り彼に於て一隻の巡洋艦を造らば我は更に其二隻を造らざある可らずと主張したり左れば英は佛露の同盟に對するの目的にて英吉利海峡に優勢の攻撃艦隊を備へ又佛は地中海艦隊に露はバルチツク艦隊におのおの其全力を注で一方には英に備へ一方には獨墺伊三國の合縱を抑へんとするものゝ如し即ち英が一等主戰艦の增製に汲々たるは攻勢を維持せんとするが爲めにして佛露の軍艦に割合に海防艦の多きは他の來襲を防禦するの得策たるを認めたるもの可し又伊、獨は海岸防禦を重んずるが爲めに特に水雷艇隊の完備に力を盡すが如き英が佛に對して攻勢を取る其外に海外の商賣貿易を保護するの必要より數多の巡洋艦を有するが如き何れも其國情の如何に由るものなり我海軍擴張の目的は東洋の海上權を占有して外交の平均を保ち通商貿易を保護して以て一國の面目利益を維持するに外ならずとすれば其製艦の方針も自から内外四邊の形勢事情に撤して確定する所なかる可らず思ふに今後の海戰は決して黄海の如きものに非ず敵は必ず數隻の主戰艦を有し且つ數多の有力なる巡洋艦を伴ふ可きは勿論なりとして尚ほ其上に注目す可きは前號にも記したる如く彼の露國の義勇艦隊の如きは海軍の補助後援たらしむ可き目的を以て代用巡洋艦として用ふ可き有力なる〓〓の汽船を增し又現に增しつゝありと云ふ凡そぜ戰時に於て〓〓の代用船に對するに軍艦を以てするが如きは寧ろ我固有の勢力を殺ぐものにして決して得策に非ざれば我國にても代用巡洋艦の制を設け平時は之を〓〓〓〓等の用に供せしめて不時の用に備ふるの必要なる可し又四面環海の我國に於ては海岸警備の一事最も肝要にして之が爲めには特に水雷艇增設の必要を認めざるを得ず〓〓の〓に〓しては篇を改めて更らに論ずる〓〓る可し