「京釜鐵道」
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時事新報に掲載された「京釜鐵道」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
京釜鐵道の敷設は豫て我政府又は政府指定の會社に許可するの約束にして敷設の條件さへ定まれば事に着手するを得るが故に過般委員は其條件を議定せんが爲め態態京城に赴きて朝鮮政府に談判を試み原公使も種種盡力したれども彼の政府は言を左右に托して相談に乘らず徒に時日を遷延するのみにて要領を得ざれば委員は一先づ歸國し原公使も其筋の命に依て歸京したりと云ふ米人は京仁鐵道、佛人は京義鐵道敷設の許可を得て將に着手せんとするの今日、我は豫約さへある鐵道を敷設すること能はずとは如何にも不思議千萬なれども事の實際を見れば強ち怪むに足らざるが如し今の朝鮮政府の役人は何れも頑固守舊の輩にして豫てより日本の文明流儀を喜ばざるのみならず彼の王妃の不幸以來は上下擧て我を忌み我顧問官を逐ふて代ふるに外國人を以てし日本臭味の志士は事に托して或は捕縛し又は殺戮して〓〓なからしめ我忠告に依て立てたる開明主義の制度法律も悉く復舊したるほどなれば我外交の意の如くならざるは勿論の〓にして米佛人等の希望が〓〓く容れられて我要求の拒否せらるるも怪むに足らざるなり然れども其要求は本來我に屬する正常の權理にして彼の〓を請ふにあらず權理ある此要求をさへ貫くこと能はざるに於ては彼等はますます増長して我勢力はいよいよ〓まり外交は一層困難なるに至らんこと〓なれば〓〓〓〓の〓〓は〓として唯我〓〓の爲め〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓る可らず〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓事情〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓からず〓〓〓〓〓〓の〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓一言せんと〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓ずとの一事なり〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓は〓〓〓〓を〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓く〓〓す可〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓さんとすれば軋りて滑かならず遂に或は破裂することある可し人間世界に陰陽〓〓あり唯正面より此事は斯くある可き〓なり彼の事は正當の請求なるが故に許可せらる可きものなりとて四角四面の理窟を並べ立つるよりも裡面に廻はりて滑に行ふの手段ある可し〓〓を談ずると共に酒を酌むの道ありと云ふ交際家の夙に知る所なり左ればこそ彼の起業者の輩が何か其筋に請願し又は事業など企る時に當り活溌に運動費を用ひて其効能の著るしきは何人も知る所なる可し内地に於て既に斯くの如くなるに何故に朝鮮の企業に運動費を利用せざるや日本人は概して清廉潔白にして唯理の曲直事の當否を見て判斷するものなれども猶ほ且つ運動費の必要あり况んや朝鮮に於てをや其國■(てへん+「丙」)人■(てへん+「丙」)は我朝野の既に己に知る所なり之に對して單に正理を談じて四角四面とは唯徒に我迂濶を披露するに異ならず我輩は朝鮮人の不條理を憎むよりも寧ろ日本人の愚を〓はんと欲するものなり或は運動費なるものは事の性質に於て其支拂の途を明にす可らざるが故に中途に於て消費すること多し思ひ切て遣ふを得ずとの説もあらんかなれども千圓の錢を投じて千圓の効能を買はんとするは無理なる注文なり一對の書面を認むるには二三通を書くに至るほどの墨を磨らざる可らず一瓶の水を沸騰せしむるには二三倍の水を沸騰せしむるほどの燃料を費さざる可らず運動費の多少中途に消失するは初めより覺悟す可き事にして其消失を心配せば何事をも企てず指を咬へて他人の運動を傍觀するの外なかる可し