「議會の爭點」

last updated: 2021-12-25

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時事新報に掲載された「議會の爭點」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

議會開塲の曉には〓〓自由の兩黨は朝野に立分れて相爭ふことならんが其爭點は何れに在るやと云ふに今日までの所にては内閣の死活を定むるほどの問題もなきが如し過日〓由黨の大會に於て黨員某氏の〓〓したる所〓〓〓〓政府は今日に〓〓〓〓〓〓〓〓の〓〓〓〓〓〓〓〓〓宮内大臣〓〓〓〓〓〓〓は〓措置〓〓を失し〓〓〓〓〓に過ぎ〓〓〓〓〓〓〓りにして〓〓は未〓〓〓〓〓〓〓も〓〓〓〓〓〓〓も聲のみ〓し〓〓に〓〓〓〓せず外交上に於ても支那の課税問題を〓めたる外に觀る可きものなし至極靜なるが如くなれども新政府の開業以來僅に四箇月を經過したるのみにして此間に著るしき功績なければとて直に打て倒す可しと云はば世人は之を酷なりとして同情を表せざることならん又彼の宮内大臣事件の如きは前日も論じたる如く勿論政府の失體にして威嚴を損したることなれども本來を云へば根も葉もなき些細の事件にして單に一笑に附す可きのみ固より以て内閣死活の問題とするに足らず或は又例の豫算に就て多少の議論もあらんかなれども是れも大體に於て前内閣の方針に異ならず軍備の擴張も世人の希望通りに實行するよしなれば内閣の運命を左右するが如き大議論を生ず可しとも思はれず左れば今度の議會は格別の騷ぎもなく先づは小波瀾の間に終始するの外なかる可きか果して然らんには在野黨も其覺悟を以て出陣し一時に勝敗を决せんとして見苦しき擧動なからんことこそ望ましけれ盖し爭ふ可き大問題なきに強ひて爭はんとすれば自から無理を犯さざるを得ず或は針小を棒大に言做し又は他の手■(てへん+「丙」)を失策として心にもなき議論を唱へざる可らず斯の如きは自から欺き又世を欺かんとするものにして天下の同情を得る所以に非ず又或は政策の得失論を別にして論據を人身の上に求め信任問題を提出して當路者の古疵など發き出し斯る人人なれば到底政治を托するに足らず云云とて俗に云ふ大風呂敷を試みんか自から一策なるが如くなれども世に聖人君子は稀なり一身上の失策を摘發すれば双方共に古疵は甚だ多くして結局水掛論に終るの外なきのみか元來政黨の本分は政策の得失を爭ふ可きものにして人身攻撃は婦女子も快しとせざる所なれば况して大の男が白晝公然議塲に於て發言す可き事に非ず若しも誤て斯の如き手段に出づることもあらんには只自から其品位を落して世の擯斥を受けんのみ現に政府が言論の自由を宣言してより世の論客は此處を大切にして深く自から愼しむ可き其反對に恰も惡口雜言の自由を得たるが如くに心得て漫語放言あらん限りの罵詈を恣にしたる者なきに非ず而して其結果如何を尋ぬれば敵の勢力を損するに足らずして唯自家の信用を損したるのみ畢竟事を急にして却て自から蹉跌したるものに外ならず政府の新陳交代は忌む可きに非ず隨分面白きことなれども其交代自から法あり敵を倒すに性急なるは却て敵の運命を長うするの媒介たる可し然かのみならず前内閣の爲めに謀るに今日若しも現内閣が頓死することもあらば却て迷惑するの事情はなきや内閣の壽命は大抵三四年にして盡くると同じく落路の政治家が人望を快復して再び世人に歡迎せらるるも亦三四年の歳月を要するの常にして分り切つたることなるに往往世論の喧しきは學〓長老の本意に非ずして之に附屬する葉武者共の小策に出るものと斷定して間違ひなかる可し今日■(つつみがまえ+「夕」)■(つつみがまえ+「夕」)現内閣を倒さんとするは恰も未熟の果物を叩き落さんとすると同樣にして前内閣員に出世を促すは創痍未だ癒えざる兵士を戰塲に驅るが如し共に其時〓〓〓〓〓なり果して然らば在野黨の爲めに計るに〓〓〓もて漫に動ず正正堂堂論ず可きは論ずると共に〓して〓理を云はず又罵詈〓〓せず讓る可きは讓て〓に〓〓の〓るを待つに若かず今の内閣とて別に勝れたる伎倆ある可しとも思はれざれば格別の手■(てへん+「丙」)も出來ざる其間に失策を犯して遠からず人に飽かるることある可し即ち在野黨の乘ず可き時機にして見苦しき擧動もなく一擧して目的を達することを得べし活眼見來れば孰れの内閣も大抵同樣にして現内閣の斃るるも前内閣が盛返へすも我輩に於ては少しも頓着せず其新陳代謝は唯是れ芝居の替り目なれども假令ひ芝居の中にも自から順序を具へて體裁の立派ならんことを望むが故に敢て一言するものなり