「單に議會の多數のみを恃む勿れ」

last updated: 2019-09-29

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時事新報に掲載された「單に議會の多數のみを恃む勿れ」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

單に議會の多數のみを恃む勿れ

是れまで政府の最も苦心したるは對議會策にして豫算の不成立、衆議院の解散も一再に止まらざりしが一旦飜然として其間を改め多年疾視したる政黨と和睦して事を共にするに至りしより其困難は大に■(にすい+「咸」)じたるが如し前内閣は自由黨と提携して無事に其政策を行ひ今の内閣は進歩黨と結託して思ひのままに議案を通過せしめたり而して今後の形勢を如何と云ふにザツト計算したる所にて進歩黨の議員は九十餘人、議員倶樂部三十人、國民倶樂部五六人、新自由黨同じく五六人にして都合百三十餘名は政府黨なり之に對する自由黨は脱黨又脱黨、次第に其數を■(にすい+「咸」)じて今は漸く七十人内外に過ぎず之に國民恊會の二十名を加ふるも九十名にして政府黨に及ばざること遠きのみならず自由黨は今や統一者を得ずして部内動搖し近日又又多少の脱黨者を見る可しと云ふ其外無所屬の議員少なからざれども是れは多く實業家にして政府に賛成する者多き例なれば政府は勞せずして議會に多數を制せんと疑ふ可らず或は其前途に於て多少心配の種なきに非ず近來當局者は人材登用と稱して政黨員を用ふれども其地位には自から限ありて官を求むる者は限なし用ひられて得意なる者あれば落選して失意の者もある可し進歩黨を滿足せしめんとすれば或は議員倶樂部其他の不平を免れず議員倶樂部其他に不平なからしめんとすれば進歩黨に不滿ある可し先例に徴するに自由黨の分裂は種種の事情に因ることなれども一は政府と提携して其黨中に自から得意者と失意者とを生じたるが爲めなりと云ふ政黨の操縱また難しと云ふ可し且つ來年は總選擧にして其影響は先づ本年の議會に現はるることなしと云ふ可らず強者に反對して其失策を非難するは世人の快とする所なれば或は選擧區民へ土産として故らに壯論を試みんと欲するものなき非ず其壯論と味方黨員中の不平と相合して或は意外の風波を生ずるやも知る可らず然れども總選擧に有力者の援助を得んとの望は大に反對の氣焔を挫くのみならず政府に味方するを恥辱と心得たる時代は既に過ぎ去て却て政府黨たるを便とするの事情もなきに非ざれば要するに對議會策は左まで心配するに〓らざれども政府の〓〓を定むるものは獨り議會の向〓のみに非ず一たび民心を失ふて非難の聲喧しきに至れば兼て時機を窺ふ〓外の政客も機熟せりとて起て運動を始む可く〓〓に依ては或は樞密院の内、〓〓の隅よりも反抗の氣焔を吐くこともある可し前内閣は議會に多數を制して此點に於ては何の困難もなかりしかども一朝偶然の機會に脆くも倒れたるは人心既に倦みたればなり左れば議會の多數必ずしも恃むに足らず其上〓〓の滿足を求むること肝要なるに然るに〓〓〓來〓〓〓〓〓れば自から其信用を〓するもの少なからず最〓の一〓は〓ち〓〓〓の〓〓にして内閣の〓〓〓〓く〓〓〓〓〓〓に〓〓〓〓〓〓〓ふ如何にして〓〓〓あ〓〓〓〓〓政府と〓〓〓〓〓世間の人人が心〓〓思ふのみならず味方の議員共も斯くては辯護に窮することならん目下の事情幸にして議會には多數を制するの望あり一歩を進めて具眼者の信用を得るの工夫肝要なる可し