「内閣の運命迫る」
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時事新報に掲載された「内閣の運命迫る」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
内閣の運命迫る
政府近來の擧動一として感服す可きものなし中にも臺灣總督府の官制を改正するに自から不如意を感じて却て局外者の喙を容れしめ一個の高等法院長を進退するにも意外の物論を生じて其始末に困却し、行政〓理も歸する所を知らず、増税の問題も尚ほ未だ定らず朝野恰も五里霧中に彷徨するが如きは總て是れ内閣の無能力を表するものにして議會の開期を眼前に控へながら其因循斯の如し内閣の運命如何は何人も疑ふ所なるに當局者が今日に至るまで終に大に奮ふこと能はざるは何ぞや畢竟自から危機切迫の事實を悟らざるにも因ることならんと雖も抑も内閣組織の不完全なるこそ弊事の病源なれと云はざるを得ず凡そ政府を組立つるには第一に最も有力なる分子を選ばざる可らず政治上に於て現在或る勢力を代表するものに非ざれば假令ひ其過去の履歴に於て觀る可きものありとするも閣員として重きを爲すに足らず屬僚は之を内に侮て命を奉ぜず〓人は之を外に輕じて信服せず恰も痩馬をして重荷を挽かしむると同樣の觀を呈して政治の機關は都て澁滯せざるを得ず次に其分子は同性質の者ならざる可らず如何に有力の政治家を集むるも互に其色合を異にして到底親和す可らざるものならんには〓事に衝突して其伎倆を示すこと能はず遂に無能無爲に歸するの外ある可らず第三内閣の中心に立つ者は閣員中最も有力にして名實共に中心頭腦の重きを爲し右を抑へ左を制して紛紛たる閣議を統一するに足る者ならざる可らず頭腦輕くして手足重ければ所謂尾大振はざるの弊に陷る可きは知れ切たることなり而して今の内閣を見るに其中心は果して何〓に存するや甚だ明白ならず閣議は恰も書生の討論會の如くにして容易に〓する所を知らざるのみか時としては閣外より閣議を左右するの形跡さへなきに非ずと云ふ次に其分子の性質如何を問へ〓〓〓ら二種類より成るは何人も知る所にして一は隱然〓〓を後楯とし他は民間の新勢力を代表するものなり近頃に至りて時勢の變遷に從ひ二者〓く抱合したるが如くなれども尚ほ未だ眞實親和の名は下す可らず表面無事の如くにして裡面に廻はれば自から方圓相容れざるの〓あり凡そ現内閣の組織を解剖し來れば先づ此邊の困難に陷り何れも容易に埒明かざるは固より其所なりと云〓〓〓〓らば之を如何にす可きやと考ふに先づ第一〓〓〓〓〓定め中心の全權力を強大にして前〓に云ふ如く〓〓〓に中心〓〓たるを必要なりと知る可し或は閣員中に其中心を取替へんとの〓もあらん又は閣外より新人物を〓へんとの考もあらんなれども容易に纏まる可き相談に非ざれば目下の〓に迫りては其〓に處し〓て自から〓本の〓を布て〓〓の决戰を試むるより〓に〓なかる可し身を顧み情に〓がるればこそ〓點もあること〓〓既に死地に陷て文明開化の外に進む可き〓〓し〓一〓ここに〓〓すれば自から氣力〓して〓〓し〓〓〓〓出〓るの〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓て〓〓の〓〓〓〓〓〓とある〓〓〓〓〓〓の椅子〓〓に足らず〓〓〓〓の如きは〓〓〓〓〓〓心したる〓は一〓〓事〓〓するに足るものなく始めて不如意を脱して如意の境遇に入る可し斯の如くにして尚ほ意の如くならず遂に失敗して〓るることあるも是れぞ所謂名譽の敗軍にして卑怯未練、一戰を戰ふ能はず坐して自滅を招くに勝るや〓〓なる可し政界次第に進化すれば藩閥黨民論黨など〓ふ異樣の區別は最早や陳腐にして之を顧みる者なし日本國の政權は日本國民中に文明の思想ある有爲の人物に歸するの約束にして政客の分合は單に政策の異同に决す可きのみ我輩の眼中藩閥なし苟も日本國民にして文明の政を行ふ人物とあれば藩閥の人も宜し閥外の人も亦妙なり等しく之を政友として其政策を助け之に反する者は等しく之を排撃せんと欲する者なり