「對外の進退/八嶋艦の着港」

last updated: 2021-12-25

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時事新報に掲載された「對外の進退/八嶋艦の着港」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

獨逸の膠州灣占領は宣教師殺害の賠償を求むるの手段として行ひたるものなりと云ふ支那に於て宣教師の殺害事件は從來毎度の沙汰にして其都度政府より賠償を拂ふの例なれども金額は一人に付き通例〓〓〓〓の間にして恰も一定の相塲を成したるものの如くなりしに然るに今回獨逸の要求は甚だ大にして從來の相塲に外れ二人の賠償に六十萬兩の金額、驚く可きのみならず其他の事件一として〓〓ならざるなし然かも〓手段を見れば卒然土地の占領を斷行の上、要求の〓〓〓及びたるものの如しと云ふも要求の〓〓〓は兎も角も事の關係に於ては獨逸は債權者にして支那は債務者の地位に立つものなれば〓當の手續を以て負債の辨償を申込みたる其返答に要領を得ずして財産差押の處置に出でたることならんには自から債權者の〓を行ふものにして毫も非難す可らずと雖も最初より一應の交渉もなく出し拔けに土地の占領とは恰も白刃を提げて枕頭に立ち債權者を〓迫すると一般、傍若無人亂暴至極の擧動にして國交際の禮儀上、斷じて許す可らざる所なりとて大に憤慨するものなきに非ず單に事の表面に着目して其擧動を眺むるときは其憤慨も一應無理ならずと雖も抑も今の世界に萬國公法と云ひ國際の禮儀と云ふ其法〓は單に表面を飾るの虚禮虚文に過ぎず〓〓の有樣を察すれば所謂弱肉強食こそ國交際の眞面目にして頼む可きものは只武力のみ強きものは他の肉を食ひ弱きものは其食ふ所となる紛れもなき事實にこそあれば獨逸の擧動が亂暴至極なりと云ふも實際は只その虚禮虚文を〓したるまでのことにして毫も怪しむに足らず支那の現状を見るに人口多く物〓豐にして廣大の版圖を占めながら國内に統一の〓を缺て運動自由ならざる其趣を人體に譬ふれば血液の循環停止して神経も其働きを失ひたるに拘はらず五體は滋養に富み立派に肥滿して直立の姿勢を保つものに異ならず苟も餌食の漁る可きものあれば〓の〓、山の奧に至るまでも直に群集して之を争はんとする今の世界の中央に斯る立派なる食物の〓〓を〓めて一見垂涎せざるものはある可らず〓〓〓〓〓が兼てより〓を注ぎながら其間の手前を憚りて只我我に其汁を吸ひつつありし處に今回獨逸が虚禮虚文を〓して〓一〓に手を〓めたるは只ありの儘の眞情を〓〓したるのみにして寧ろ卒直の擧動として認む可きのみ毫も咎むるに足らざるのみか之を〓むるこそ〓〓の〓なれども又一方より見るときは今の國交際は弱肉強食の實を演じながら兎に角にに表面には虚禮を〓るの常なれば獨逸が遽に其虚禮を脱したるこそ付込み〓なれ一〓は顔色を〓うして〓〓の次第を質問するも差支ある可らず即ち外交上の抗議にして塲合に由りては之を試みるも可なれ共其質問抗議は旨き汁の獨占を許さずとの意味を示すものにして心の底には此方にても直に虚禮を〓して其汁を〓つの覺悟こそ肝要な〓〓〓の〓〓など云云して〓〓〓の〓〓を〓〓するが〓〓は〓〓の骨頂にして〓〓の〓を免かれざるものと〓〓〓〓〓れば〓〓の〓〓〓〓して之を看過するとせざるとは只この方の利害如何に在るのみとして〓内に顧みて我國の進退を如何すべきやと云ふに火元は對岸に在りと云ふも其對岸は纔に一衣帶水を隔てるのみにして飛火の危險も圖る可らず〓〓〓も〓〓〓〓用心最も肝要なり即ち臺灣の如き既に我版圖に歸したる上は内地〓〓守備を嚴にして尺寸の土地も斷じて失ふ可らず日本の國土は古來金〓無缺と唱へて一點も缺けざるのみか近來大に膨脹したる其金〓の〓〓〓〓を保たんには單に自から守るのみならず塲合に由りては進んで攻むるの必要あり即ち十の物を失はざらんとするには其〓を十三にも十五にもして始めて十を全うするを得るの常にこそあれば我國〓〓て臺灣を守〓〓〓〓ば更らに進んで〓外の〓を守るの覺悟なきを得ず他の擧動に對して異議を提出するも大に進んで〓〓の擧動に出づるも其决斷は自國自衞の方寸より割出す可きものにして今や形勢切迫、國中最上の智力を集めて〓外の一方に注ぎ全國の人心を擧て向ふ所を一にす〓〓此塲合に藩閥と云ひ民黨と云ひ老〓と云ひ少〓と云ひ〓〓たる長短消長を〓して内に爭ふが如き斷じて許さざる所なり一念發起して早く其議を改め外に對して〓〓を决せんこと我輩の切望に堪へざる所なり

八嶋艦の着港

英國より〓〓の八嶋艦は去る廿四日香港を〓して明二十九日横須賀着港の豫定なるよし同艦は富士〓〓〓〓の戰鬪艦にして二艦の到着は我海軍に一層の勢力を加へたるものと云ふ可し抑も軍艦は自から〓を要する中にも軍艦の如き甚だ高價にして現に二艦の製造費は一隻に付き一千何百萬圓を費したりと云ふ〓る大金を全く不生産的の事に投ずるは甚だ愛しむ可きに似たれども軍艦の價は單に金を以て計る可らず例へば國民の〓底に何千萬の預金ありと云へば只それ丈けの事なれども其金を以て幾隻の軍艦を製造し之を國に備ふるときは銘銘の心に〓む所ありて大に心強きは勿論、外に對して日本の國力を發表する其價は容易に計る可きに非ず我軍が命を愛しまずして海軍擴張の必要を唱ふる所以なれども更らに實際の損得に就て云ふも平生の用意を疎にして一且の〓に會すれば大に〓するの塲合なきを得ず例へば日清戰爭の時、遽に軍艦の不足を感じ内内〓國より買入れんとして少なからざる金を費したるは世人の記憶する所にして斯る塲合に際しては物さへ手に入れば其價の如き問ふに遑あらずとして大に金を費したることなれども如何に金を投ぜんとしても實際に目的を達する能はざるときは如何にす可きや平生より心掛けて〓〓の軍備を備ふるは單に損得の點より見ても至當の計なる可し近來四邊の形勢次第に切迫して如何なる事變の出來も圖る可らず特に海軍の必要を感ずるの時機にこそあれば〓〓〓國力の許す限り大に金を投じて軍艦を造り一隻にても其數の多からんことを期せざる可らず過日富士艦の到着に次で今回八嶋艦の〓〓は更らに海軍の光彩勢力を増したるものにして〓〓〓〓の〓〓として吾吾國民の最も祝す可き所のものなれば明日同艦の着港に就ては〓〓〓の熱心を以て大に歡迎〓んこと我輩の望む所なり