「總選擧了る」
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時事新報に掲載された「總選擧了る」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
總選擧了る
今回の總選擧は案外平穩にして格別の騷もなかりしは政府が強ひて干渉せず寧ろ局外に中立して選擧法を勵行したるが故ならん先づ以て目出度しとして扨その結果は如何と云ふに詳細の數は未だ知る可らざれども絶對に多數を占めたるものなきは明白なり進歩黨の豫算に縋るも同黨の當選者は百十五名内外に過ぎずして自由黨百八名を出す可しとは自分免許の推測なり左れば結局の勝敗は小黨派竝に無所屬議員の向背に依て定まるものにして議會開場の際に至らざれば判然せざれども何れにしても政府は多少の困難を免れざる可し若しも在野黨多數ならんには忽ち衝突す可きは明白にして例の如く解散か辭職か將た別に變則の手段を講じて一時を彌縫するの外に道ある可らず之に反して假令ひ政府黨が多數を占むるも尚ほ今日のまゝにて推し行くことは難かる可しと云ふ其次第は自由黨は既に政府と提携を約したるものなれども其約束は殆んど豫約と見る可きものなり凡そ天下の大政黨が進退を決するに只肝膽相照すと云ふが如き漠然たる口實を以て滿足す可きに非ず現に前年提携したるときにも板垣を始め二三の黨員を政府に入らしめたることなれば今日に於て無條件の降參に甘ず可しとは思はれず只總選擧は目前に在り政府と結べば何かに就て多少の便利ある可しとて取敢へず味方を約したるに過ぎず政府とても選擧の結果如何なる状態を呈す可きや知る可らざるに斷然一黨派と結託するは得策に非ず左ればとて他に依賴す可きものもなければ差當り自由黨に近づきたるのみ選擧に局外中立の地位に立ちたるを見ても其事情を察す可し眞實の提携談は今日以後に始まることならん或は曰く政府の方針は不不黨に在り來るものは拒まず去るものは追はずと此口實は毎度當局者の繰返へす所なれども畢竟空想に過ぎざるは議會開設以來の經驗が屡々證明したる所なり或は時ならざるに議會を解散し又は政府が不意に倒るゝなど政治界に種々の混雜を生ずるは所謂超然主義の結果ならざるはなし政府の長老も最早や十分目を覺ますべき筈なるに今日に於て尚ほ此論を聞くは不審に堪へず蓋し小黨分立して未だ政府の死命を制するに足るものなきが故ならん例へば今回の選擧に於て進歩黨が絶對的多數を制したらんには政府は全然この黨に投じて政府政黨合體の實を呈するか然らざれば内閣を解散すの外に道なかる可く又自由黨が過半數を制するも同樣にして政局は俄に一變し〓〓〓〓〓らんに〓〓〓らざりしは〓〓と〓〓〓〓れば〓〓を〓て〓〓〓〓し〓曖昧の〓〓〓〓〓して立〓〓〓〓〓〓〓に入らしむる〓〓〓〓〓〓す可〓〓〓〓〓〓るに在り政治〓〓に選擧人の宜しく注意す可き所なる可し