「飽くまでも酒税增加／航海奬勵法の改正」
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時事新報に掲載された「飽くまでも酒税增加／航海奬勵法の改正」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
本文
增税案に對する議會の大勢を察するに地租に就ては異説紛々反對の論多けれども〓〓所得税には甚だしき異議もなきが如し而して議員の多數は解散を厭ふの情あるが故に若しも政府が斷乎たる決心を以て飽くまでも爭はんとするの意氣を示すときは必ずしも通過の望なきに非ずと云ふ政府の覺悟果して如何、現に議員の如きも銘々の私に就て其意見を聞けば數年前までは選擧臣民の手前に對して增税論など苟も口外するを得ざるの有樣なりしに今日は時勢一變、選擧民の如き〓增税は實際止むを得ざるの處置として内心には〓に覺悟の〓なれば其方法にして宜しきを得るときは贊成するも差支なしとは一〓の説なるが如し增税の機正に熟したるものなれども人間の私情に訴へて租税は增すが好きか增さぬが好きかと云へば何人も增すを好まざるのみか全く無税こそ望む所なれば成る可く種々の口實を設けて增税に反對することならんなれども若しも當局者が其反對を以て眞實の反對と見做さんには大なる間違なる可し事の表裏虚實を察して一〓〓〓を達するは當局者の腕前如何に在り大に奮發す可き所なりとして扨その增税の方法に依りては我輩に於ては政府の提案を其儘に〓〓するを得ず飽くまでも增税の一方に增し地租所得税の如きは姑く之を貯へ〓き以て他日必要の際に供せんとするものなり扨も目下清國の〓道島は〓計四百萬石と稱すれども實際日本人の口に入る〓の量は殆んど六百萬石に上る可し間違ひもなき事實なれども假りに四百萬石として今の税率を凡そ三倍して一石二十圓を徴するときは八千萬圓の收入を得べし日本の〓〓〓費を一切酒税に負擔して解〓々餘裕あり我輩本來の目的は此邊に存することなれども斯る急激の變化は實際に妙ならずとあれば〓く一〓〓〓り凡そ二倍の增率として十五圓を課す可し一方に大に税源保護の手段を盡し又その徴税法を便利にして之を取るときは六千萬圓の收入〓〓にして地租所得税など殊更らに〓〓を〓して延々たる手段を煩はすの必要ある可らず然るに今度の增税は専ら〓に取らず銘々〓〓の税率を增したるのみにして其〓の補充を他の税源に求めたるは總じて〓〓の得たるものに非ず我輩が政府の爲めに〓しむ所〓〓或は若しも一石十五圓〓〓〓〓ふ〓〓を〓〓るときは其結果、〓の〓〓〓〓〓〓〓〓て〓〓〓〓〓〓〓結局豫定の〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓しとの〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓を知らざる〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓の理由を聞くに近年來米價騰貴その他の原因よりして農民の生活大に餘裕を生じたれば增税に差支なしと云ふに在り實際の事實なれども之と同時に近年來清酒の需用、大に增したるも右と同一にして即ち人民の生活進歩の結果に外ならず是れ亦實際の事實にして疑ふ可らざるものなり双方共に相違もなき事實なりとして酒税の增加果して酒の需用を減ずるの結果ありとすれば地租の增加も亦同樣の結果なきを得ず如何となれば今の人民の有樣にして增税の爲め〓生活の費用を節して自から酒量を減ぜざるを得ざる程度のものとすれば酒に〓〓其〓〓〓〓せしむるも又は地租に〓て酒を買ふの豫裕なからしむるも其結果は詰り同一なればなり左れば人民の生活に割合せて不相當の增税とあれば孰れにしても酒の需用を減ずるの結果〓〓かる可らずと雖ども我輩の所見において〓〓の〓力に充分の餘裕あるを認めながら多々ますます其餘裕を許して大に酒を飲ましめ大に酒税に取らんと欲するのみ或は此點より〓れば地租の如きは全廢して専ら酒税の一方に〓とも差支なからんなれども斯る突飛の決議は他日の談として姑く擱き實際に地租の負擔は〓〓に納税者に〓すれども酒税は全く異にして其增率は納税者に於て毫も苦痛を感ぜざるものなれば地租の如きは容易に動かさずして人民をしてますます酒を飲むの餘裕を生ぜしめ〓して一方に於て大に酒に取るこそ收税〓〓〓たるものなれ即ち我輩が専ら酒税增加を主張する所なり政府案の運命は未だ知る可らずと雖も其成行は孰れにしても今後はますます增税の必要を告げざるを得ず〓〓の次第なれば我輩は飽くまでも酒税增加を主張すると共に一方には大に税源に〓の工風を〓ぜんとするものなり
航海奬勵法の改正
政府は議會に航海奬勵法の改正案を提出したり其趣旨は從來外國諸港の間に〓〓を營む者に與へたる奬勵金を廢止すると同時に明年十月以降新に帝國船籍に登録する外國製造の船舶には一切奨励金を與へざることにして〓〓費の增加を制せんと云ふに外ならず近年〓〓の造船業は著しく發達したりとは云へ内國海運業者の需用に應じて盛に外國航路に使用す可き鋼鉄汽船を製造するは目下の実際に於て甚だ覺束なき所にして多くは外國の造船所に製造を依賴するの常なれば若しも奬勵金の下付を内國造船の船舶のみに限らんには當〓者は議会に奬勵法の〓〓を見ながら實際に奬勵金の〓〓に浴する能はざるに至る可し或は東京汽船會社〓〓〓〓〓が外國〓〓に使用す可き〓〓〓〓の船舶は〓〓明年十月以前にも〓〓〓に登録の手續を〓〓の見込なれば假令ひ右の如き制限を置くも營業者の既得權を害する掛念なしとは當局者の唱ふる所なれども實際我國の海運を發達せしめて奬勵法の目的を全うせんとならば今後大に外國に船舶を注文して新に航路を開くなり航海の度數を增すなり孰れにしても現在の規模を擴張するの必要は甚だ明白にして此邊の必要に應じてこそ始めて航海奬勵の實を擧ぐるを得る次第なるに政府が豫算の齟齬に狼狽して〓〓らに窮窟なる制限を設け奬勵法の精神を殺して其目的を〓〓せんとするは何事ぞや海運業前途の發達に非常の妨害を與ふるものにして斯くては奬勵法を非奬勵法に退化せしむるの結果を免かれざる可し政府が〓〓改正を施さんとするは畢竟財政上餘裕に乏しきが爲めならんなれども其餘裕なしと云ふは單に政府の事にして決して國力に〓〓なしと云ふべからず〓〓〓奬勵の一事は〓〓の〓〓〓なく日本國民の一般に寄與する〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓しむも〓〓〓〓當局者をして〓〓〓自から〓〓〓〓〓〓とならば何ぞ國民に〓へて其〓〓を決めざるや〓〓外國諸港〓の〓〓の如きは貿易〓〓〓〓〓られ〓起〓〓のにして其地に居住する日本人の便利を增進するの〓〓〓ならざれば寧ろ大に奬勵気を與へて其〓〓を〓〓〓〓〓〓の處置と云ふ可〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓が當〓の豫定に超過して目下〓〓〓〓〓て支出の道なしとならば當局者自から逆算の〓を〓ひ専ら〓財源を求めて支〓〓〓〓案ずるこそ〓〓の手段にして苟も〓〓の〓〓〓〓〓て法の〓〓を妨げんとするが如きは我輩の斷じて許さゞる所なり
〓〓〓改正案は奬勵法の〓〓〓〓を一昨年より〓〓して十七箇年と定めたり果して此期限内に奬勵の〓を奉ぐるを得るや否やは容易に〓〓可らず従て其期限に重りて更らに延期の必要を見ることもあらんなれども兎に角に實施期限を定め置くときは自から營業者に〓心〓〓ふるの効あるを以て此邊〓改正は當局者〓〓十に一任して〓〓なかる可し