「收税吏の人選最も肝要なり/開國主義の急要」

last updated: 2021-12-25

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時事新報に掲載された「收税吏の人選最も肝要なり/開國主義の急要」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

酒税檢査の點より見て現行の施設に改良す可きの箇條一にして足らされども差當り政府の決斷を要するものは收税吏の任用に重きを置き其待遇を厚うして氣品高尚の人物を用ふるの一事なり今日の實際を見れば檢査監督に從事せしむる吏員は孰れも薄給の小吏にして智慧分別に乏しき其上に轉任更迭頻々行はれて事は〓るゝもの少なきが故に營業者の迷惑は容易に非ず酒税檢査の手續は甚だ綿密にして一〓の〓〓なきが如くなれども分別なき小吏の〓が〓〓一偏、漫に之を〓行するときは種々の不都合を生じて殆んど堪へ難きと同時に若しも營業者が管理の不慣に乗じて其目を偸まんとすれば如何なる不正の手段も行はれ難きに非ず左れば收税吏に其人を得ざるときは〓〓には恰も不正の手段を助長せしめて正當の營業者を苦しむるの結果を見る可きのみ今の〓〓には盗賊詐欺の事を行ひ他人の〓物を奪ふて自から利せんとするものさへも少なからず在るに酒造營業者にして不正の手段を敢てす可しと覺悟すれば只無智不慣なる收税吏の目を掠むるか若しくは之に利を喰はしめて其口を留むるの手段を行ふに過ぎず別に甚だしき危險も冐さずして坐ながら何千何萬の利を私すること容易なりと云ふ脱税密造の弊害行はれざらんと欲するも得べからざるなり抑も〓〓の弊害は如何なる〓〓の租税に於ても其〓〓〓〓る可しと雖も酒税の如き間接税に於ては特に甚だしきものあり例へば地租所得税の納税者が不正手段を行ひ用地の反別を詐り又は其收入額を隠蔽して脱税を謀り首尾能く目的を果たしたるものありとして其結果は如何と云ふに脱税者が自から利したる其金額は正しく國庫の損失に歸す可きものなり即ち此塲合の問題は〓く此に止まるなれども酒税の塲合に至りては決して然らず若しも密造脱税の〓、〓〓行はるゝときは差當り國庫の收入に其〓〓〓を減ずるのみならず不正の營業者は〓〓の利を利する割合に價を低くして不正〓を賣出す可きが故に正業者は到底競爭に堪へずして〓々〓倒されざるを得ず明白の成行にして茲に至りては日本の酒造業を〓〓せしむると同時に國家の〓〓を〓〓せしむるの結果を免かる可らず酒税の〓〓は其影響の容易ならざるを見る可し聞く所に據れば今の全國の酒造家は凡そ一萬三四千の數なれども其中にて〓〓の數も多く〓〓の清酒業者と〓す可きものは何千を以て計ふるに過ぎずと云ふ或は密〓〓税の工風に付ても聞き得て詳なるものも〓〓〓〓く〓〓兎に角に今日の有樣にて〓〓〓〓〓〓も〓〓〓〓〓〓るの〓にして〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓しを〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓を斯く〓〓〓〓〓〓〓〓〓から〓〓〓〓〓〓〓して注意〓〓〓〓〓の其後に外ならざれば何は兎もあれ税源保護の緊急手段として速に收税吏の人選を決行す可きものなり即ち關係の檢査監督に從事せしむ可き吏員は俸給を厚くして氣品高尚、學問の思想に乏しからざる人物を用ひ〓に營業者と直接して其事情に精通せしめ恰も醫者の〓家に於けると同樣、〓〓の營業に關しては一切の科学〓〓を胸中に貯へて親切に監督し或は營業者が集會の塲合には必ず臨席して相談を共にするは無論、更らに一歩を進むれば酒造法の改良、販路の〓〓等に關しては學問上の新智識を注入し又は諸般の報告を供給して務めて營業者の爲めにするの心得を以て事に當らしむ可し凡そ此邊の〓〓にして收税吏に高尚の人物を得て監督の實を全うせんとするには俸給を豐にして待遇を厚うせざる可らず即ち大に收税費の增加を〓すべしと雖も之が爲めに租税の弊風を一掃して簡單の收入に何千萬圓を增す其利益に比すれば何百萬圓の收税費は物の數にも非ず政府にして酒税增加の決心ある上は先づ第一に此點に着目し大に收税費を支出し收税吏に適當の人物を得るの一事は差當り決斷す可き緊急事として我輩の敢て勸告する所なり

開國主義の急要

守舊排外の思想は獨〓永く維持す可らず〓〓に消滅す可きは自然の勢なり一時喧しかりし非内地雜居論も何時しか影を潜めて〓〓なる守舊家が最早や口外するを得ず朝野共に雜居の準備に忙はしきは一段の進歩にしていよいよ雜居の暁には更らに幾多の變化を見ることなる可し内外の〓〓〓〓と爲れば外國語の必要を增すと共に衣食住も次第に西洋流と爲り商賣工業も外人が直接の顧客と爲り又その仲間と爲るに於ては自から趣を變ぜざるを得ず教育の如きも日本の子弟が外人の學校に入り外人の子弟が日本の學校に學ぶに至れば依然舊〓を存すること難かる可し改正條約の實施は種々の點に於て保守派排外の領分を犯すのみならず目下の經濟事情が偶然にも開國主義の進歩を促し來れりと云ふは外ならず外貨輸入の必要是れなり是れまで如何なる方法にても苟も外國より借金し外人の權理を伸ばすは守舊家の〓く忌み嫌ひし所なれども〓〓の〓〓を全うするが爲めには外資を入れざるを得ず外貨を入るゝには〓門を開放すること肝要にして講會社の株券を自由に所有せしむるは勿論、或は土地の所有權をも許さゞる可らず一方に外資の輸入を求めながら他の一方に於て是等の權理を拒むは恰も右手に棒を振り上げながら左の手にて人を抱くに異ならず自家撞着にこそあれば此點に於ては世人も漸く排外主義の不可を悟りしことならん同時に外交上に於ても亦ますます變化の必要を感ずる其次第〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓だ急にして亞細亞〓〓〓に獨立を〓〓〓〓〓〓〓も〓く分割の〓〓に迫りしことなれば東洋の〓國は自から〓〓にして其〓〓に〓するの〓は只〓〓の仲間に入るに在るのみ而して兩洋の仲間に入るには一切萬事東洋風を脱して西洋に同化せざるを得ず同氣相求め同類相集まるは人事の定則にして歐米諸國は時に反目嫉視することなきに非ざれども互に親類の感を抱くに反して日本の如きは元來人種を異にし宗教を同うせざるが故に動もすれば疎外せらるゝを免れず况して自から舊風を固守して他を排斥し強ひて自他の間に隔壁を築くに於ては感情いよいよ衝突して親密なる交際を望む可らざるのみか〓に列國の〓〓と爲り孤立の不幸に陥るやも知る可らず〓艇より排外主義威を〓〓するの〓〓なるを知る可し〓思想は政治上に於ても經濟上に於ても將た社交上に於ても次第に衰退し又衰退せざるを得ざるの運命なるに然るに世間は尚ほ國粋主義など稱して強ひて〓〓古〓〓維持せんとするもの少なからざるは奇と云ふ可し畢竟するに〓〓は時勢の〓手にして早く自から罹るに非ざれば遂に蹉跌す可きは明白なり只氣の毒と云ふの外なけれども又此〓の爲めに大勢の進行を妨げる〓〓は遺憾と云はざる可らず向ふ所を定めて出發をし船は早晩彼岸に到着するに相違なしと雖も船中に心得違の者あり或は〓〓の運轉を〓くも若しくは途中用もなき〓に碇泊することもあらんには航海に非常の日數を費さゞるを得ず〓〓の競爭は〓〓ボートレースの如く一〓の遅速を爭ふものなるに徒に其進行を妨げんとは返へす返へすも遺憾と云はざる可からず論者自身の爲めにも將た國家の爲めに〓燃〓〓せんと我輩の切に望む所なり