「税源選擇の順序」
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時事新報に掲載された「税源選擇の順序」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。
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税源選擇の順序
間接税を課するに當て最も注意を要するは課税の爲めに物價の騰貴を促して結局世間の需要を減少するの愚なきや否やの一點に外ならず若しも斯る掛念あらんには〓〓課税を思ひ止まるのみなれども其反對に課税品が世間一般の嗜好に適し社會の繁昌に連れていよいよ消費の〓を增すが如きものならんには大に税率を增して収入の增加を謀るこそ人民の感情に〓れずして巧に功を収むるの〓と云ふ可けれ即ち間接税が從來の財政に於て〓に有用せられたる所以なるに近年西洋諸國の實際を見るに納税者の間に種々の苦情反論あるにも関はらず兎角直接税を增税して財源を求むるの常にして英吉利普魯西の所得税、佛蘭西墺地利の營業税の如き其適例なりと云ふ仮令ひ人民に納税の〓〓あるも斯く奇禍の直接税を課するときは自から彼等の感情を害して政府の不人望を招くに至るは〓〓の〓なるに此邊の困難をも顧みずして實際右の方針に出づるは全く之に〓〓して間接税の負擔より生ずる不公平を〓はんとの主旨に外ならず間接税の爲めに課税品の價、騰貴するときは學者は貧者に〓して餘分の負擔を〓りて其〓に不公平を免かれざれば大に直接税を重くして〓〓に負擔を願ふ可しとは西歐諸國一般に行はるゝ學説にして所得税の如き此邊の目的に論せらるゝ塲合少からずと云ふ政府が臨時議會に增税案を提出するに當て酒税の外に所得税法に改正を加へ累進率を課して上級の〓〓に負擔を重くせんとしたる其上に地租の增率を企てたるも畢竟直接税に依頼して課税の公平を保たんとの考に出たるものなる可し政府が增税案を固執したるが爲めに增税案は〓〓に衆議院の同意を得る能はず結局解散と〓に全部不成立の結果を見たれども眞實〓政營業の目的を達せんとならば次期の議會には必ず增税案の〓〓を求め其税入に依て三十二年度以後の財政を維持するの方針に出でざる可らず其塲合に當局者は西洋學者の所論に隨ひ富者、貧者との間に課税の負擔を公平にせんとて臨時議會に提出したる增税案と同樣、〓〓所得税等の增税を企つることもあらんかなれども此の如きは全く無用の考にして一方に酒税增税の〓〓甚だ豐なる塲合に殊更らに〓る〓〓〓税を課するは決して〓の得たるものに非ず近年民力發達の程度より云へば大に酒税を增して酒價の騰貴を見るも富者と貧者との負擔に格別の不公平を抱くなどの掛念なきは〓〓が〓〓〓〓する〓にして現に〓九議會に於て制定したる〓〓〓の内にて營業税〓〓〓の如き直接税の収入は豫定より少なく〓〓の〓〓〓〓〓〓からざるに〓も酒税の収入〓〓しく〓加したるを見るも此邊の事情を推察するに〓からず西洋諸國に於て直接税を增して負擔の不公平を補はんと云ふが如きは要するに從來間接税の率を增し盡して增税の餘裕なきに至りたる結果にして我國の如く酒税を始め〓〓税其他の間接税に增収の見込ある塲合に〓に西洋諸國の事例に倣ひて直接税を增すは決して課税の公平を得るの道に非ざるのみか却て世間の不人望を招きて税法の〓〓なる割合に十分の収入を見る能はざる可し昨年來營業税徴収の實際に徴して明白の事實なるに尚ほ負擔の公平云々の説を株守して再び同樣の失策を招かんとするは何事ぞや酒税其他の間接税に增収の餘裕ある以上は地租に依頼して財政を維持せんなどの考を止めにするは勿論所得税の如きも改正を加へて大に税率を輕くし單に税の名目のみを止め置くこそ適當の處置なる可し盖し戰爭洪水飢饉の如き不慮の事變は人間社會に免かれ難き災害にして其都度臨時の費用を要すること勿論なれば豫め之に應す可き財源を供ふるは財政の安全を謀るに最も必要なる〓しも低率ながらも平生より所得税を課し居らんには財産調査の方法も〓は具はりて一旦必要に際して只その税率を二倍し三倍するときは他に財源を求むるなどの不〓なくして〓に臨時の費用に應ずるを〓〓し事〓〓〓が所得税の名目を〓し置く可しと云ふ所以にして目下の實際に於て適當の〓〓は此一事に外ならざる可し政府が斯る手加減を以て税法の改良を謀るときは一方に減税の名を成して一方に增税の實を収むるに難からず當局者にして財政整理の爲めに增税を必要と認めたる以上は右の方針に決て增税法の調査に着手し完全の法案を提出して一〓〓速に其實施を謀る可し我輩の勸告する所なり