「一切反對/市街宅地税」

last updated: 2021-12-25

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時事新報に掲載された「一切反對/市街宅地税」を文字に起こしたものです。画像はつぎのpdfに収録されています。

本文

一切反對

目下我國の重要問題は外交と軍事とに外ならず行政改革の如き比較し來れば些末事にして重きを置くに足らざれども外交なり軍事なり大に力を注で充分の目的を達せんとするに先だつものは金にして即ち財政の最も急なる所以なり財政と云へば差當り攝ナの問題にして聞く所に據れば政府の計畫に酒税は從來の税率七圓を十二圓に揩オ其他は砂糖、烟草、所得税、宅地税等の新税を課し若しくは攝ナを行ひ歳入を填補するの考にして夫れにても尚ほ不足の掛念あるにや昨今更に賣地税を揩ウんとするなどの議もあるよし我輩の前號にも論じたる如く砂糖税以下の税目は孰れも苦情を免かれざる其上に實際の收入も高の知れたるものゝみにして斷じて適當の税源と認むるを得ず僅々三千何百萬圓の不足を補ふに斯る細々の税源を漁りて遂に賣地税とまで堕落とは窮餘の窮案とは申しながら堂々たる大政府の手段としては餘りに情なき次第なりと云ふ可し或は國中の税目をいよいよ取り盡して最早や大に取る可きものなしとあれば其窮案も致方なけれども實際は決して然らず大に取り得べきものを取らず強ひて細々の税目を求めて之に取らんとするは何事ぞや斯る姑息の手段は須らく斷念して一番大に取る可きものなり我輩の所見を以てすれば今の清酒の税率を二倍もしくは其以上にするときは三千何百萬圓の不足の如き之を補ふて綽々餘裕あり政府は何を憚かりて其摎ヲの決斷を斷ずること能はざるや或は七圓を揩オて十五圓又は二十圓と爲すが如き急激の變化は行ふ可らざるなど云はんかなれども抑も急激とは何事ぞや我國の歳出を見れば日清戰爭前までは七八千萬圓のものが戦後〓に膨張して二億何千萬圓に上るに及べり一〓三倍の搖zにして急激と云へば急激と云はざるを得ず或は其二億何千萬圓の中には軍備擴張〓臨時費の支出も少なからざれどもその臨時費は果して一時の必要に止まるものなりやと云ふに今後の成行を〓すれば軍備その他の擴張に隨ひ次第に歳出の揄チを致して今の臨時費は〓に經常費に變ぜざるを得ず明白の〓にして歳出の減額は到底望む可きに非ざれば今より〓〓すること肝要なりとして一方に歳出揄チの要を認めながら一方に於て獨り攝ナの急激を云々するが如き毫も解す可らざるなり又或は單に酒税に取るは不公平〓〓われるなどの説もあれども抑も租税の〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓に平均するの効果を見る〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓く國中〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓るもの〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓費にして其〓〓は一般の需用者に歸するものなるが故に税源保護の道、宜しきを得るに於ては或る程度〓では之を揩オて差支ある可らず而して其程度の問題に至りて重しと云ひ輕しと云ひ其輕重を云々するは畢竟坐上の空論のみ凡そ人民に税を課するは熱病患者に解熱剤を服せしむるが如し喩へばキニーネの用法の如き老功の醫者ならんには身體の強弱に應じ患者の瞑眩を起さゞるを度として最初より極量を用ひ一發目的を達すれども庸醫の〓は然らず只管瞑眩を恐れ細々分量を揩オて適當の量に達する迄には再三再四これを試みて其間に時日を經過し可〓藥效を空うするもの多し酒税の揄チを見れば昨年は三圓を揩オ今年は又五圓を揩キ可しと云ふ斯る次第にては明年も亦何圓の揄チ案を見ることならん政府は恰も庸醫の事を行ひつゝあるものと云ふべし今の日本國民の體力は甚だ強壮にして容易に瞑眩の掛念なし斷じて保證する所なれば當局者に於ては〓と其體力を視察し瞑眩を起さゞるまでを程度として極量の攝ナ剤を服せしむ可きのみ我輩の敢て勸告する所なり思ふに民黨の輩は在野の當時、政府の攝ナ案に對して攝ナ其事には異議なしと雖も行政整備の實に伴はざる攝ナには不同意なりとて之に反對したるは自から記憶する所なる可し然るに今や其輩は自から政府の局に當りて部内の整理の如き自家の手の中の物なれば如何なる大改革も思ひの儘にして百事意の如くならざるなき筈なるに一〓大に攝ナの決斷に出づる能はず細々の税源を漁りて賣〓税までも取らんとするが如き前の公言に對しても自から耻づる所なきか若しも斯る姑息の手段に依て一時を彌縫するときは財政上の破綻は眼前にして明年に至れば更らに又種々の細税を漁るの醜態を免かる可からず政府自から醜態を演じて世間の信用を失ふは差支なしと雖も年々歳々細々の攝ナの爲めに苦しめらるゝ人民の迷惑は斷じて忍ぶ可らず我輩は酒税以外の攝ナ案には一切反對を表して政府の改悟を促すものなり

市街宅地税

近年西洋諸國の學者間に土地は天與の〓〓にして人間の進歩に連れて次第に價格を揄チするものなれば之に重税を課して其揄チより生ずる利uを社會全體に分配す可しとの説あり〓來財政當局者の間に宅地税の〓を〓す可しとの議論甚だ盛なるは全く右の學説に〓るものにして現に明年度の歳入不足を補ふに就ても大に市街宅地税を揩オて其一部に充つるの〓〓ある由なれども斯る攝ナは今の實際より見て〓〓の宜しきを得たるものと云ふ可きや否〓〓の調査に據れば全國市街宅地の〓別は二〓八百四十七〓、〓〓は三千二百九萬二千〓〓〓にして之に〓〓〓〓二分五厘を〓して八十萬餘圓の收入を得る次第なるが當局者の考にては明年度より地價なり税率なり孰れか一方を三四倍して其收入を三百萬圓内外に揄チする計畫なりと云ふ近年國力の發達と共に市街宅地の價格が著しく揄チしたるは實際の事實なれども其揄チの割合は各地方繁昌の度に從て夫れ夫れ相違ある可ければ全國を通じて同樣の割合を以て地價を揩キか或は地價を動かさずして税率を三四倍するときは各地方の間に攝ナの負擔を不公平にするの疑念あるのみならず宅地の如き財産に課する税を〓〓に揩ウんには直に其賣價を減じて現〓の所有者に意外の損失を蒙むらしめざるを得ず或は所有者が永く宅地に住居するの考なれば一時價格の下落を見るも深く憂ふるに足らざるが如くなれども京阪地方の如き商賣の發達著しく資金の運轉連なる塲所に於ては他に轉賣せんが爲めに一時宅地を所有する者、少なからず比〓に取りては攝ナの爲めに賣價の下落するは非常の〓〓にして殆んど資金運轉の自由を失はざるを得ざる可し攝ナに伴ふ必然の成行にして若しも政府が此邊の事情を調べ些少の收入を揄チせんが爲めに市街宅地の税率を揩ウんには結局市民の反對を促して收税上に如何なる不都合を見るやも知らず或は當局者の内には宅地税を揄チする主旨は攝ナの負擔を公平にするに外ならざれば此際目下の借地〓を調査し之を標準として課税す可しと云ふ者あるよし若しも自己の所有地を他人に貸渡したる塲合には其借地料は詳細に調査するを得べけれども自から所有の宅地に住居する塲合には如何にして調査の道を求むるや其困難は營業税法に定めたる建物の賃貸價格を調査すると同じく納税者は成る可く少額に申出ず其反對に收税吏は多額に見積りて双方の間に衝突を〓し政府の不人望を招くに至るは營業税の實際に致して甚だ明白なりと云ふ可き今の財政に於て攝ナの已む可らざるは世間に異論を見ざる所なるに其計畫、〓々失敗して實際に效を奏し〓〓はざるは全くの税〓の〓ししを得ざりしが爲めに外ならざれば政府に於ても〓と從來の失敗に〓し市街宅地税を始め所得税〓〓〓税の如き〓〓の攝ナは斷然思ひ止まり撈セの餘裕最も豊なる税目に依〓す可きのみ我輩の敢て忠告する所なり