完了形を理解するには、語彙動詞自体のもつアスペクト特徴や共起する副詞語句の意味を理解することが重要になる。アスペクト特徴と完了、継続、存在のそれぞれの読み方はつぎのように対応している。安藤・現代英文法講義4.3, 9.1.1-9.1.2参照。
* アスペクト特徴 \ 意味 | * 完了 | * 継続 | * 存在 |
状態的 | × | ○ | × |
非状態的・完結的・瞬時的 | ○(任意の基準時。justがあれば「発話時における完了」を強調する。期間を示す副詞語句を伴うと反復の意味が加わる) | ×(継続の意味を表すには、完了進行形にするか動詞を否定する) | ○ |
非状態的・完結的・非瞬時的 | ○(任意の基準時。期間を示す副詞語句を伴うと継続の意味が加わる) | ×(継続の意味を表すには、完了進行形にするか動詞を否定する) | ○ |
非状態的・非完結的 | × | ○(期間の副詞語句と共起する) | ○ |
安藤のこの分類をおおまかに理解するには、以下のような樹形図を書いて整理すればよいだろう。
佐々木が本章のねらいとして考えたのは以下の5点だと考えられる。
* ねらい | * ねらいの内容 | * 文例番号 |
1 | 現在時制で完了の意味を表す。 | 68(談話の開始時は現在完了形が用いられ、次いで過去時制に切り替えられる) 69(「発話時における完了」を強調する) 70(完了の意味を表す have been to を用いる) |
2 | 現在時制で継続の意味を表す。 | 71(状態的動詞 be を用いる) 72(期間の副詞語句を伴う) 73(期間の副詞語句を尋ねながら状態的動詞 be を用いる) |
3 | 現在時制で存在の意味を表す。 | 74(非状態的動詞 have を用いる) 75(非状態的動詞 visit の意味にあたる be を用いる) 76(出来事の有無、回数を表す副詞語句 ever を伴う) 77(出来事の有無、回数を表す副詞語句 never を伴う) 78(出来事の有無、回数を表す副詞語句 lately を伴う) |
4 | 未来の時を示す。 | 79(完了の意味を表す) 80(継続の意味を表す) 81(存在の意味を表す) |
5 | 過去時制を用いる。 | 82(過去の完了の意味を表す) 83(過去の継続の意味を表す) 84(過去の存在の意味を表す) 85(基準時よりも前に生じた出来事を表す) |
* NUMBER | * STATUS | * DESCRIPTION | * REFERENCE | * SOURCE? |
68 | UPDATED | 第1文は完了相で現在時制の文例であり、第2文は非完了相で過去時制の文例である。非状態的・完結的・瞬時的動詞 finish を利用して、完了の意味を表している。この文例のように、談話の開始時は現在完了形が用いられ、次いで過去時制に切り替えられるのが普通だと説明されている。 | 安藤・完成英文法§66 安藤・現代英文法講義9.1.2.1, 9.1.6.1 | |
69 | UPDATED | 完了相で現在時制の文例である。非状態的・完結的・瞬時的動詞 leave を利用して、「発話時における完了」を強調している。 | 安藤・完成英文法§66 安藤・現代英文法講義9.1.2.1 | |
70 | 完了相で現在時制の文例である。完了の意味を表す have been to を用いている。 | 安藤・完成英文法§68 NB1 安藤・現代英文法講義9.1.3[A] | THE FAMILY STORY-TELLER (1880) "THE STORY OF THE SUMMER BOARDER, MOSES, AND THE TWO VISITORS", in Harper’s Young People, February 17, 1880, THE FAMILY STORY-TELLER http://www.gutenberg.org/ebooks/28353 , "... I have been to the station and got the little girl." | |
71 | NEW | 第1文は非完了相と進行相で過去時制の文例であり、第2文は完了相で現在時制の文例である。状態的動詞 be を利用した、継続の意味を表している。 | 安藤・完成英文法§67 安藤・現代英文法講義9.1.2.2 | |
72 | 完了相で現在時制の文例である。期間の副詞語句を伴い、継続の意味を表している。 | 安藤・完成英文法§67 安藤・現代英文法講義9.1.2.2 | Fontenay, Charles Louis (1959) Wind , http://www.gutenberg.org/ebooks/22590 , "He has been dead for three years." | |
73 | UPDATED | 完了相で現在時制の、 wh 疑問文の文例である。期間の副詞語句を尋ねながら状態的動詞 be を利用して、継続の意味を表している。 | 安藤・完成英文法§67 安藤・現代英文法講義9.1.2.2 | Rice, Alice Hegan (1909) Mr. Opp, http://www.gutenberg.org/ebooks/25070 , "How long have you been in Cove City?" "Just a month, ..." |
74 | NEW | 完了相で現在時制の否定の文例である。非状態的動詞 have を利用して、存在の意味を表している。病気になるのは反復可能なことだから、文例の和文通りに「……したことがある」に対応するのであって、反復不可能な行為の表現である「……している」には対応しない。 | 安藤・完成英文法§68 安藤・現代英文法講義9.1.2.3 | Galsworthy, John (1921) To Let, http://www.gutenberg.org/ebooks/3817 |
75 | 完了相で現在時制の文例である。非状態的動詞 visit (英文には viist という誤表記あり) の意味にあたる be を利用して、存在の意味を表している。 | 安藤・完成英文法§68 安藤・現代英文法講義9.1.2.3 | Ibsen, Henrik ,translated by Edmund Gosse and William Archer (1892) The Master Builder, http://www.gutenberg.org/ebooks/4070, "Is this the first time you have ever been up to town, Miss Wangel?" | |
76 | 完了相で現在時制の文例である。出来事の有無、回数を表す副詞語句 ever を伴い、存在の意味を表している。アメリカ英語ならば have gone to でも同一の意味を表しうるが、イギリス英語の have gone to ではそうはいかない。なぜなら後者は完了の意味にしか用いられないからである。 | 安藤・完成英文法§68 安藤・現代英文法講義9.1.2.3, 9.1.3 | Chambers, Robert William (1908) The Firing Line, D. APPLETON AND COMPANY http://www.gutenberg.org/ebooks/15654 , "Have you ever been to Nassau?" | |
77 | NEW | 完了相で現在時制の、疑問文が付加されている文例である。出来事の有無、回数を表す副詞語句 never を伴い、存在の意味を表している。 | 安藤・完成英文法§68 安藤・現代英文法講義9.1.2.3 | |
78 | 完了相で現在時制の、付加疑問文の文例である。出来事の有無、回数を表す副詞語句 lately を伴い、存在の意味を表している。 | 安藤・完成英文法§68 | ||
79 | NEW | 完了相で未来時の文例である。未来の基準時までに出来事が完了している意味を表している。 | 安藤・完成英文法§74(A) 安藤・現代英文法講義9.3.2[A] | Greg, Percy (1880) Across the Zodiac, Truebner http://www.gutenberg.org/ebooks/10165 , "I will not promise, but I think that I shall have made up my mind to tell you what I have to tell..." |
80 | UPDATED | 完了相で未来時の文例である。未来の基準時までに状態が継続している意味を表している。 | 安藤・完成英文法§74(B) 安藤・現代英文法講義9.3.2[B] | |
81 | 完了相で未来時の文例である。時や条件の副詞節において未来の基準時における存在の意味を表している。 | 安藤・完成英文法§74(C) 安藤・現代英文法講義9.1.2.5 | Lang, Andrew (1886) The Mark Of Cain, http://www.gutenberg.org/ebooks/21821 , "Give me back my cigarette-case, please, when you have done with it." | |
82 | 第1文は非完了相で過去時制の文例で、第2文は完了相で過去時制の文例である。過去の完了の意味を表している。 | 安藤・完成英文法§72(A) 安藤・現代英文法講義9.2.2[B] | ||
83 | 完了相で過去時制の文例である。過去の継続の意味を表している。 | 安藤・完成英文法§72(B) 安藤・現代英文法講義9.2.2[B] | ||
84 | 完了相で過去時制の否定の文例である。過去の存在の意味を表している。 | 安藤・完成英文法§72(C) 安藤・現代英文法講義9.2.2[B] | Wodehouse, Pelham Grenville (1910) The Man Upstairs and Other Stories, Methuen & Co http://www.gutenberg.org/ebooks/6768 , "She had never yet been inside a theater." | |
85 | 完了相で過去時制の文例である。基準時よりも前に生じた出来事を示している。 | 安藤・完成英文法§73 安藤・現代英文法講義9.2.2[A] |