『洋行之奇禍』 その0

last updated: 2013-01-23

このテキストについて

近代デジタルライブラリーにて公開されている斎藤隆夫『洋行之奇禍』(渓南書院、1907年)をテキストに起こした。 『比較国会論』の書籍画像を閲覧するには、近代デジタルライブラリー詳しく選択を選択し、全国書誌番号:41017514を入力すればよい。 この著書は、『立憲国民の覚醒』に「斎藤隆夫著」として列記されているところには、「洋行の奇禍」として表記されている。

誤字脱字だと考えられるものは適宜加除訂正を施した。 訂正箇所には原則としてその旨を記述していない。 ただし、註釈として訂正内容を表記することもある。 なお、念のために以下のことを断っておこう。 親不幸者は原文通りの表記である。 小供子供の両方の表記については、その記述通りに表記した。 女生女性表記にした。

各段落の末尾が読点のものと句点のものがあるが、これについては原文を尊重し、そのとおりに表記している。

なお、判読できなかった文字は〓と表記している。 この文字が解る方や誤字脱字等を発見なさった方は、どうかお知らせください。

暫定的目次

原文には其三が存在しないので、当ウェブサイトでも表記していない。

下記の該当ページとは、近代デジタルライブラリー所収の書籍そのものの情報である。 近代デジタルライブラリーにて公開されている書籍を閲覧するときに利用されているコマ数を求めるときには、以下の式のページ数に該当する数字を代入して計算すること。 表示された結果から小数点以下を取り除いた数値が、当該コマ数となる。

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小見出し 該当ページ 該当箇所から
一言、再言 冒頭 …病と称する悪戯者は、憫れなる天外の孤客を追うて千里万里を走らしめ…
其一 1 …唯一の洋行あるのみ、僕は堅く決心したが此決心が十年の後に如何なる結果を持ち来るやは神ならぬ人間の知る筈はない。
其二 11 …僕が兄は実に此等悪人政治家の爪牙と為って狐狸犲狼の為めに貪食せられたる愚者の一人である…
其四 22 …僕は道徳上の権利を行い義務を果さんが為めに洋行するのである…
其五 37 …東京に来りし翌年フト風邪に懸りたるが因と為りて、左の肋部に些少の痛痒を感じたるが故に…
其六 43 …此老婆は片足を已に棺中に入れながら驚くべく我欲の年強し…
其七 50 …御祭なぞは古代の遺風である、迷信の遺物である、宮に詣る奴は無智文盲の阿呆であると、一概に之を笑う者は未だ人間世界を知らざる白面の書生たるを免れず…
其八 57 …信仰なる者は利益あると同時に驚くべき弊害の伴うものである…
其九 66 …日本の基督教徒は絶えず家庭の快楽を口にし家庭の改良を叫ぶ、僕は此点に付ては熱心に彼等に同情を寄するものである…
其十 75 …米国の独立祭に当て日本帝国の万歳を叫ぶは唯に無意義なるのみならず侮辱の意を含むものである…
其十一 86 …彼の下女兼女学生は常に日本服を得んが為めに苦心焦慮するや久しと雖ども未だ其志を達せざりしが…
其十二 94 …彼の死は深く悲しむべきも彼は此時に逝て却て幸にてありし…
其十三 100 …自分の室を賞め立てる点に付ては何れも一致せるには呆れざるを得ない…
其十四 109 …昨日迄四十度を指せし寒暖計は今朝に至り突如として零度以下十度に降る、一夜にして五十度の激変…
其十五 115 …僕は直に入院することに決した…
其十六 119 …此迄日本の医者は一度も切解治療なる事を言わなかったが此病院の医者は直に之を勧め出した、之が日本医と西洋医と異なる点にして又西洋医の優る点であるやも知れない…
其十七 126 …其時已に僕は一種異様なる苦痛を感ぜしが間もなくして恐ろしき大苦痛は襲撃し来れり…
其十八 131 嗚呼彼等は全く僕に向て死を宣告した。
其十九 139 …彼は常に語って曰く、人間は平常無事の時には宗教心は起らざるものにても一朝困難なる場合に遭遇するときは何人も宗教心の起らぬ者はない、君と雖ども将来に於て此経験を得るの時は必ず来るべしと、彼が僕を試験せんとする時は直に来た…
其二十 146 嗚呼僕はトウトウ一人と為った…
其二十一 153 入り来りたる婦人は正しく病院の監督者である…
其二十二 163 斯く決心した上は何ずれ此の病院とは喧嘩を始めねばなるまい…
其二十三 174 …長き間の夢は彼の博士の一言に依て忽ちに覚めた、然り迷が霽れ夢が覚めたなれば直に動かねばならぬ…
其二十四 179 …之は銭問題ではない、人間の権利問題である、道徳問題である、社会問題である、日本人問題であることは前に述べた通り…
其二十五 196 …数年前に丁度上野の櫻花が満開の時に梅川楼にて国の懇親会を催した…
其二十六 205 乞う之より僕をして現われ出でたる三人の同胞に付て聊か語らしめよ…
其二十七 218 …多年鍛えし東京弁護士の腕を以て汝等の正体を現わし首引き抜くは安けれども生かして還すは後世の為めと思い語歩を転じて再び口を開いた…
其二十八 228 …僕が茲に述べんと欲するものは…日常交際に於ける人間相互間の誤解…
其二十九 238 …嗚呼足下には我を害せんとする同胞あり、万里の外には我に向て満腔の同情を寄する親友あり…
其三十 249 …兎に角紐育迄行こう、然る後に於て委細を決めよう、窓外を眺むれば降雪盛なり…
其三十一 258 翌朝例の監督者は来れり…
其三十二 269 …車掌は来れり、何故かと問えば雪崩の為めに進行する能わずと答う…
其三十三 284 …僕は世に専門家なる看板を掲ぐる者が其専門の智識と技倆に乏しきことを呆れるの外はない…
其三十四 296 …僕は寝台に横わった儘一歩も室外に出なかった…
其三十五 303 …一軒の茶屋にと腰掛くれば後より来れる一輌の腕車は追い着いて此処に止まれり…
其三十六 312 …再び此世に生れ来て大望を遂げんとするの野心は有せないが、唯々願うものは生か死か何れか其一である…